所長メッセージ

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所長メッセージ

 

T&Eが大切にするもの、それは「ワクワク、ドキドキ」の共有

就職は、人生という名の料理を引き立てる“スパイス”のようなもの。
本当に大切なのは、その料理を自分らしく味わい尽くす力を育てることです。

T&Eは、就職のためだけの場所ではありません。
ここは、自分の人生をもう一度「面白くしていく力」を育てる場所です。
設立は1989年。当時からT&Eは、職員と利用者という枠にとらわれず、みんなで試行錯誤しながら、「こんな場所があったらいいね」をかたちにしてきました。
団体名の由来でもある**“Trial & Error(試行錯誤)”**を大切にしながら、時にはうまくいかないことも経験しながら、でもそれを前向きに活かせるような場所。
そんな空気が、今もT&Eには流れています。
私がいつも大切にしているのは、**「ワクワク、ドキドキ」**という感覚です。
就職は、たしかに大切な目標のひとつかもしれません。
でも、人生はそれだけじゃない。
学生時代があり、働き始めてからもいろいろな人との出会いがあり、趣味や挑戦、もしかしたら恋愛や子育てもあるかもしれません。
そのすべてに可能性があって、考えるだけでワクワクすることだってあるはずです。
T&Eに来られる方の中には、最初の就職がうまくいかなかったり、自信をなくしてしまっている方もたくさんいます。
「もう一度やってみようかな」と思えるまでに、少し時間がかかるかもしれません。
それでも、ここでの日々が“自分のペースで、もう一度始める”きっかけになることを、私たちは願っています。
私たちはその“人生の土台”を、一緒に整えるお手伝いをしています。
だからこそT&Eでは、プログラムやプロジェクトも、利用者のみなさんと一緒に考えて、一緒に動かしていきます。
そこにあるのは、“やらされる支援”ではなく、“一緒に楽しむ日々”です。
就労移行支援事業所と聞くと、少し堅いイメージがあるかもしれません。
でももし、「ちょっと気になるな」「一度見てみたいな」と感じたら、ぜひ一度、気軽に見学にいらしてください。
その際は、私が直接ご案内させていただきます。
T&Eで、これからの人生にワクワクするきっかけを、見つけてみませんか?

 

若い世代の就職支援は、
ただ“就職できる”だけでは物足りない。
ひとりひとりに異なる課題があり、
私たちは、いつもその“横”にいます。

 
まずはじめに…
このサイトをご覧になって、「ちょっと堅そうだな…」と感じる方もいるかもしれません。
たしかに、職員の写真がスーツ姿なのを見て、そう思われても無理はないかもしれません。
でも、実際のT&Eはまったくそんな感じではありません。
私たち職員は、利用者のみなさんと同じように、デニムやポロシャツで過ごしています。
だからこそ、最初に少しだけお伝えしておきたいのです
――T&Eは、構えずに来られる場所です。
T&Eに通われる方の中には、たとえば…
学校を卒業したけど就職がうまくいかなかった方。
一度は就職したけれど長続きしなかった方。
自信が持てずに、次の一歩が踏み出せなかった方。
そんな方たちに、履歴書の書き方や面接練習をして、「はい、これで就職できますよ」とお伝えする。
――それは、私たちの考える“支援”ではありません。
T&Eは、医療現場の専門職たちが立ち上げた場所として、
“内定をとる力”ではなく、“人生を歩いていける力”を育てる支援を、ずっと大切にしてきました。
それは、私たちが“発達課題を乗り越えるプログラム”と呼んでいるものです。
T&Eの設立当時から、変わらず受け継がれてきた支援の核でもあります。
「人は、年齢や状況に応じて“成長のステップ”を経験します。
そのステップは、仕事や人間関係、自分自身の理解に影響を与え、それらをひとつずつ乗り越えることで、心の健康や社会的なつながりが生まれていきます。」

特にここ数年のコロナ禍は、若い世代にとって大きな影響を及ぼしました。
人と人とのふれあいから得られる学びの時間、
言葉にできない空気や気持ちを察する体験――
そうしたものが、取りこぼされてきたように感じています。
もちろん、リモートやデジタルの利便性も大切です。
けれど私たちは、「便利さ」と「温かさ」、その両方を持った支援でありたいと
思っています。
T&Eは、並んで歩く支援を大切にしている場所です。
無理に引っ張るのではなく、焦らず、一緒に見つけていく。
そんな日々の中で、「働くって、少し楽しそうかも」
そう思える瞬間を、一緒に探していけたらと思っています。

 

小規模の事業所が取り組む、ビッグプロジェクト!!

「誰一人取り残さない」T&E流のSDGs
【社会貢献プロジェクトT&E+】

T&Eには、どうしても見過ごせない“声”があります。
それは、「本当は働きたい」「社会の一員になりたい」と願っているにもかかわらず、制度や時間、条件の壁によって、その願いすら“期限切れ”になってしまう方々の存在です。
たとえば──
・病気や障害の影響で、就労移行の登録期限内に就職できなかった方
・就労条件を満たせず、企業就労の対象にならなかった方
「働きたい」と真剣に願いながらも、制度の外に押し出され、支援の届かない場所に取り残されていく…。
T&Eは、そんな現実に対して黙っていることができませんでした。
だからこそ、私たちは動き出しました。
制度の“隙間”からこぼれ落ちそうな人たちに、「あきらめない道」を届けるために。
詳しくは、T&E+のページをご覧ください。


T&Eにしかできない就労移行支援事業所をつくる

現在、障害者支援の業界ではビジネス化が進み、大手による効率重視の運営や、短期間での就職実績が注目されることが多くなってきました。インターネットで「就労移行支援」を検索すると、まさに星の数ほどの事業所が存在し、日々新しい事業所が誕生し、同時に閉鎖されているのも現実です。
T&Eは、精神科医療スタッフが中心となって立ち上げた、小規模ながら本質を追求する就労支援事業所です。ひとりひとりの課題と向き合い、時間をかけて伴走する──それが私たちの支援スタイルであり、30年以上揺るがずに守り続けてきた理念です。特に若年層を対象とする私たちの支援では、単なる就職ではなく、「人生をどう生きるか」「何を大切にしていきたいか」といった本質に寄り添う支援を行っています。
 

数字よりも、人の歩みにこだわりたい

支援業界では「就職率」「定着率」「就職者数」といった数字が重視されがちです。しかし、数字には表れない“物語”があることを私たちは知っています。
例えば、T&Eを卒業後、障害者雇用枠で就職し、数年後に自らの力でキャリアアップを繰り返し、ついには夢だった仕事に就いた方。数字で見ると「短期離職」と判断されてしまうケースでも、私たちにとっては“希望を貫き、自らの力で未来を拓いた成功例”です。こうした一人ひとりの道のりにこそ、本当の支援の価値が宿っていると信じています。
 

「楽をしない」支援を選ぶ理由

就労支援の分野では、大手事業所との連携による“紹介の効率化”など、業務の簡素化が進んでいますが、私たちはあえて「楽をしない」支援を選びます。
個々の特性を理解し、その人に最も適した支援先を選ぶには、多くの事業所や企業と深く関わり、丁寧にマッチングする必要があります。その手間を惜しまないのがT&Eの支援です。人は数字ではなく、人生そのもの。だからこそ、安易な流れ作業ではなく、信頼関係を築く支援を貫いています。
 

支える人も、ずっと変わらない

T&Eには、設立当初から関わっている職員や理事、関係者が多く在籍しています。職員の多くが10年以上のキャリアを持ち、利用者だけでなく、雇用先企業の皆さまにとっても、安心して長くお付き合いいただける環境を整えています。
長く寄り添うことで見えるものがあります。だからこそ、定着支援においても、利用者・企業の両方にとって信頼できる存在であり続けることができます。
 

共創アーキテクトとしての視点

T&Eの所長として、そして“共創アーキテクト”として、私はこれまでの支援の枠組みにとらわれず、障害のある方々とともに「新しい働き方」「新しい社会参加の形」を創造することを使命としています。
「共創アーキテクト」とは、支援する側・される側という垣根を超え、ひとつの目標に向かって共に考え、創り上げていく“設計者”のこと。制度の限界や支援の常識に縛られず、若者と対話し、夢や可能性をかたちに変えていく──それが私の役割です。
例えば、特性を活かし、職人技に通じるような専門性や技能を育てていく「プロフェッショナル育成」もその一つです。それは単なる職業訓練ではなく、社会に実装されていくべき“職域の創出”です。テニス愛好家や選手を支えるプロストリンガーの育成や、カフェオープンに向けた本格的商品開発、木工・アート分野における高品質な制作販売などは、その実践例と言えるでしょう。
なかでも現在、構想を進めている「流動的次世代型B型事業所」は、私たちの“共創”の象徴となるプロジェクトです。B型事業所の新規設立が難しくなりつつある東京都の現状の中にあっても、私たちは、あえてこの形に挑みます。なぜなら、それが「できる限り働きたい」「社会とつながっていたい」と願う多くの方への“光”になると確信しているからです。
このB型事業所は、作業工賃を得ながら無理なく通所できることに加え、特性やスキルに応じて、プロフェッショナルとして工賃を得ること、あるいはB型から一般就労への道すら視野に入れられる“動きのある場所”です。長年積み重ねてきたT&Eの就労移行支援のノウハウ、派遣業界や企業との連携を活かすことで、それを実現可能なものにしていきます。
これは決して簡単な道のりではありません。しかし、国が目指す“包摂型社会”の流れと同じ方向にあり、私たちにしかできないアプローチだと考えています。そしてそれは、障害があるというだけで働く機会を奪われがちな時代にあって、次世代に必要とされる「共に創る」支援のかたちです。
 

これから先も
日本の障害者支援を支え続ける存在を目指します

ここまで35年以上、これからの10年、20年先を見据えて

「病気や障害」とひとくくりにされることの多いこの社会で、
ひとり一人の違いに丁寧に向き合うこと。
それがT&Eが大切にしてきた支援の在り方です。
特に若年層の支援においては、症状や特性だけでなく、
そこに至るまでの背景や、その先に描く未来も人それぞれ。
就職に至るまでの時間も、かかるエネルギーも、ひとしくありません。
この30年間で、社会全体の理解は確かに深まりました。
けれど、支援の現場に身を置いていると、
「本当にそれで良いのか?」と心に引っかかることが、今も少なくありません。
だから私は、いつもT&Eの利用者、職員、支援者の皆さんと話し合い、
迷ったら、現場に立ち戻り、もう一度“自分たちにできること”を見つめ直します。
今回ご紹介した“ビッグプロジェクト”も、そんな対話の中から生まれた挑戦です。
今、私はこの“ワクワク”と“ドキドキ”に胸を躍らせながら、未来に目を向けています。
これからの10年、20年先も、支援の原点を見失わずに、T&Eらしいやり方で、日本の障害者支援の未来を、しなやかに、力強く支えていける存在でありたいと願っています。